最近運動不足な母(私もだが)を連れて散歩がてら近所の浜へ。
見つけた流木が龍のアタマに見えるとか言い出した母。
私(ハハ…)
手に取りシゲシゲ眺めていると私もそれにしか見えなくなって、結局持ち帰り綺麗に洗って玄関のオブジェになりました(^_^;)
(私が辰年なのも何かの縁かな)
オキムです!
最近は自粛要請により家に居る時間が増え、また梅雨~夏の間はルアー作りに難があることも伴って尚一層時間を惜しんでルアー作りに精を出しています。
今後は水温が上がって浅場の釣りが多くなることを想定して少し軽めのジグも製造中。
これまでは市販の組成(アンチモン・錫、鉛の比率)がはっきりした硬質鉛を使用してきましたが、在庫も少なくなってきたのでより安価な活字鉛やジャンク鉛を買い、これを精製して使ってみる事にしました。
今記事では自身初となる『鉛の精製』について紹介していきます♬
硬質鉛の利点!
釣り業界で流通している鉛には『純鉛』と『硬質鉛』の二種類があり、以前の記事でそれぞれの特徴についてお話したかと思います。
私が使用しているシリコン型(ワッカーシリコンM4470)の耐熱温度は約300℃。
純鉛(融点327℃)を使用するには無理があるため硬質鉛(約278℃)を使用しています。
硬質鉛は純鉛と比較して、
・ 融点が低い
・ 比重が軽い
・ 硬い
・ ひけが少ない
といった特徴があります。
『ひけ』とは熱収縮、硬化収縮によって体積が減る・窪む現象のことです。
型に流し込んだ鉛が冷めるにつれて部分的に痩せ、予定した形状にならないなどの問題が生じた場合はアンチモンや錫の比率を増やすことで解決することがあります。
アンチモンや錫の比率が高い程硬い鉛が出来る訳ですが、硬過ぎると衝撃に弱く場合によっては落としたりぶつけたりしただけで割れるなど耐久性に問題が生じる場合があります。
こういったケースでは逆にアンチモンや錫の比率を下げ鉛に粘りを持たせることで解決することがあります。
製作するルアーや型の形状、使用環境に応じて硬質鉛の組成を変える事で、より使い易いルアーが綺麗に作り易くなるというわけです。
活字鉛(活字合金)!
お安く硬質鉛を入手する手段としては『活字鉛』を精製するのが一般的です。
古くから印刷屋さんの刻印には活字鉛と呼ばれる金属が使用されてきましたが、活字鉛の成分の大半は鉛・アンチモン、錫なのです。
組成は刻印によってまちまちでそれ以外にも少量様々な成分を含んでいます。
刻印に塗装がしてある場合などその塗料も不純物になりますしね。
そのまま溶かしてメタルジグを作ると表面が粗くなったり、巣が出来たり、重さが不均一、場合によっては強度不足になることが考えられます。
これらの理由から欠陥の無いルアーを作ろうと思えば精製して不純物を取り除いてから使用するのが望ましいです。
因みにお値段はというと、
先日メルカリで購入した活字鉛(刻印)は20キロで7500円(送料込)でした。
市販の精製済み硬質鉛だと20キロで17000円程度なので半分以下のお値段ということになります。
メーカーのジグではアンチモンの含有率は約10%程度だと言われています。
調べてみると鉛を硬くするのは主にアンチモンの仕事で錫は補助的な役割だそうです。
(補助ってなんだ?)
とにかくアンチモンを混ぜれば硬い鉛ができるそうなんですが、アンチモンの融点は630℃もあるため生半可な設備では十分に溶かすことが出来ない、またアンチモン単体が結構高価なため活字鉛(廃刻印)を精製するのが手っ取り早いということのようです。
一般的な活字鉛だとアンチモン(13%)錫(3%)みたいです。
鉛の精製!
今回一番の目的は活字鉛を精製して純度の高い硬質鉛をゲットすることですが。
これまで掻き集めた格安のジャンク鉛やその他組成不明の鉛もこの機会に溶かして精製、扱いやすいサイズに作り替えちゃいましょう♬
少し大きなインゴットになるとリードメルターの窯には入らないんですよね(^_^;)
この日の為に会社の廃材置場で片手鍋やタコ焼きプレートを拾ってきましたw
薄い鍋やアルミ鍋は使用しているうちに穴が開くことがあるので注意して下さい。
なるべく肉厚の鉄もしくはステンレスが良いと思います。
流し込みで鍋を持ち上げる際もかなりの重さになりますから持ち手はしっかりしたものを選んで下さい。
木製や留め具が華奢なものは危険です。
注ぎ口(横口という)の付いたお玉を準備しても良いかもしれませんね。
スタンバイOK!
人体に有害なガスが発生するので風通しの良い場所で作業するのは勿論のこと、防毒マスクも絶対あった方が良いですよ!
火を使うので周りに燃えやすい物が無いことも確認してから作業に取り掛かりましょう!
【準備したモノ】
・ タコ焼きプレート
・ 片手鍋
・ カセットコンロ
・ カセットガス1本
・ ガラ入れの金属製ボール
・ お玉
・ スプーン
・ 活字鉛、他
・ 防毒マスク
・ 革手袋
活字鉛を鍋に入れコンロを点火したら10分程で下部が溶け始めました。
(常時強火)
古くなった家庭用カセットコンロを使用、火力もそんなに強いタイプじゃありませんが問題ありません。
たまに金属製のお玉でかき混ぜてやると溶けるのが早いです。
お料理用バーナーで上から加熱したりしましたが余り効果は無かったです。
コンロの熱だけで十分作業は可能です。
15分足らずですべての活字鉛が溶けてしまいました。
上層の灰色の部分が不純物、下層の光沢のある部分が硬質鉛。
不純物を片側に寄せ取り除きます。
お玉より柄の長いカレースプーンがやり易いと思います。
どんどん鉛の温度は上昇していきますので必要以上に高温になる前に一旦コンロのスイッチは切っておいた方が安全かもしれません。
ある程度不純物を除去できらたら火を止めタコ焼きプレートへ流し入れます。
不純物は多少残っていてもOK!
ゆっくり注げば鍋に残ります。
流し込んだ鉛は勿論ですがタコ焼きプレートも全体が熱々になりますので火傷には注意して下さい。
一回目の流し込みを終えたら軽く鍋の中を掃除して次の活字鉛を投入、コンロを再点火。
一度鍋が温まると次からはあっという間に鉛が溶けだすので作業ペースは想像していたより早いです。
20キロの活字鉛の精製があっという間に終了!
あまりにも不純物が多かったので不純物だけを集めてもう一度精製してみました。
(新聞紙右側)
一回目に精製した硬質鉛と成分に差があるかは気になるところです。
ボールの中身が最終的に取り除かれた不純物でこちらは廃棄します。
純鉛ということで入手したインゴットも溶かしてプレートに流し込みます。
やっぱ純鉛はスゲーや(^_^;)
活字鉛と比べて中々溶けません。
火を止めるとあっという間に固まるし。
硬質鉛が如何に扱いやすい材料かが良く分かりました。
純鉛と硬質鉛の違いは見た目にもハッキリ分かります。
(画像からは分かり難いですが)
アルミホイルのように艶やかなのが純鉛(左)
白く濁ったのが硬質鉛(右)
重量比較!
組成不明など数種類の鉛を溶かして同サイズにしてみました。
体積はほぼ同じなハズなので重さの違いからその組成が大体判明するのではないかと考えたのですが。
K(活字鉛から精製)は丁度200g
その他の鉛はというと、
K2 175g
JN 212g
NK 185g
? 190g
1:1 203g
K2 =活字鉛の不純物を再精製
JN =純鉛
NK =通販:鉛くん
? =メルカリ、組成不明
1:1=JNとKを1:1で混合
考察!
純鉛と精製硬質鉛の質量には想像していた程差がありませんでした。
融点は純鉛の方がずっと高いので型へのダメージ、作業性を考慮すると精製硬質鉛の方がジグ作りに向いていることがよく分かります。
精製硬質鉛の方が市販の硬質鉛より重たい事からアンチモン・錫の比率が少ないと予想。
同寸法のジグを作るとより重たいジグが出来上がると考えられます。
現在メーカー品を型取りして市販の硬質鉛を流すと1割ほど軽いジグが出来るので少し困っていたのですが、今回の精製硬質鉛を使えば型取りしたジグに近い重さのジグが作れそうです。
組成が不明だった鉛は精製硬質鉛と市販品の中間程度の硬質鉛のようです。
試しに作ってみた1:1(K:JN)は少し重ため。
融点とひけの具合によっては同寸法で少し比重のあるジグを作る際役立ちそうです。
不純物から再精製したK2は少し軽めになってますのでアンチモン・錫の比率が高いのかな。
逆に同寸法で軽めのジグ、ずん胴でひけが発生するジグの製作に用いれば症状が少ないかもしれません。
この他にも今回の精製、サイズ統一による比較検証によって色々な事が分かりました。
今後は更に融点や硬度、収縮、表面粗さなども調査して作業環境に合った鉛の選択に役立てていこうと思います。
あ、因みに20キロの活字鉛から精製できたK、K2の合計は17キロ。
不純物が3キロ。
正確な融点は今後調査するとして、溶けだすまでの時間など感覚的には市販品とそれ程差が無く感じたので今の所は質の良い硬質鉛が格安で手に入ったなと満足しております。
まとめ!
今回はメタルジグを自作する上で使用する鉛を廃金属から精製したぞ!というかなりマニアックなテーマを長々と紹介させて頂きました(^_^;)
作業は想像していたより簡単だったので今後はお安く活字鉛が手に入ったら精製して使っていこうと思います。
硬質鉛も買えば結構しますからね。
材料が安ければそれだけ沢山、色んなバリエーションのジグが作れます。
沢山作ればそれだけ経験値も蓄積されスキルも上がるというものです♬
興味のある方は安全対策をしっかり講じて試してみて下さい。
では~!